「分かった!」
明王の加護を授かった帰りに、神子が鷹通と友雅の間で喜びを噛み締めていた時だった。
「どうしたんだい、急に」
「太陽は情熱なんですよね。鷹通さん」
何の前触れもなく大声をあげた神子は鷹通に問う。
「先ほどの明王の問いのことですね。情熱とは全てを明るく照らし、常に天にあるものだと考えています」
情熱とは何か。 先刻、明王に与えられた問いだ。
「友雅さんは月でしたよね」
神子は桃源郷の意味を理解していないが、月に変わりはない。
「あぁ、そうだよ」
短く返事をする友雅に、神子は身を乗り出して言った。
「月って、太陽の光を反射してるから明るいんですよ」
「・・・・・・?」
「鷹通さんは太陽の光。友雅さんは太陽の光を反射してる月の光。ってことは―――」
神子はかなり興奮して目を輝かせているが、鷹通と友雅はついていけずに顔を見合わせた。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「元は同じものってことですよ。なんかすごいなぁ―――」
話についていけない白虎二人を傍らに置いたまま、神子は一人で爆走していた。
神子殿の言う月と、友雅殿の言う月は少し違う。
桃源郷とは、行くことの出来ない神秘的な場所。
そんな所の月など到底見ることは適わないが、あまりにも喩えが美しすぎはしないだろうか。
友雅殿は意外にも、以前より情熱的なことを高く評価していたように思う。
掴めない男だと思っていたが、神子殿が言うように、見方が少し違うだけで本当は同じものが見えているのかもしれない。
情熱など、私には遠い存在だと思っていた。
桃源郷に輝く月。
その輝きが、情熱的な者を照らす陽光と同じものだったとは・・・。
思いの外、私も情熱を感じていたということか。