苛立った元希の声が耳に響くが、こっちはそれどころではない。
「は・・・・・・ぅっ・・・」
なんとか痛みから逃れたかったが、元希に退く気はないらしく、さらに腰を上げてくる。
「チ、まぁいいか」
元希に苦痛の色はなく、指より奥に進んでくる熱いものは、体積を増しながらさらに進入してきた。
「は・・・はっ・・・ぁ」
痛みと苦しさで息をするのがやっとの隆也は、膝だけで体重を支えられなくなって、元希の上に覆いかぶさるように両手をつく。
元希の腰が隆也の腿の裏にあたって最奥をついたところで、元希の喉から低音が響いた。
「オイ。自分で押さえてろ」
痛みと苦しさに耐える隆也はには、元希の言葉を理解するのにしばらく時間がかかった。
「・・・・・・・・・?」
「イくのは勝手だけど、汚すなよ」
汚すな。という言葉の前に「オレを」と付くんだろうという事は余裕のない隆也もすぐに気づいて、元希が置いた自分のタオルで先端を覆った。
が、汚すもなにもこんな状況でイけるわけもない
体を支えていた手が、片方タオルを押さえる方にいった所為で少し不安定になった隆也の体を、元希の腰が突き上げる。
「っ!・・・う・・・・・・ふっ」
ローションが効いているから動きはスムーズで、元希の熱い塊が、縦横無尽に動き回っている。
「は・・・・・・っ・・・あっ・・・」
注挿を繰り返すうちに一瞬、しびれるような感覚を覚えて、タオルで押さえている元気のないそれがぴくりと反応した。
「・・・・・・・・・っ」
元希の唇の隙間から微かに甘い吐息が吐き出される。
「くっ・・・・・・んんっ・・・・・・は・・・」
動きが定まって、突く速度も増してきた元希が動くたびに、じわりとタオルに包まれたものが自立しはじめる。
苦しさには慣れてきて、痛みはほとんど感じなくなっていた。
「あっ・・・・・・あぁっ・・・」
隆也は、後ろを突かれながらタオル越しに硬くなってきた自身を握って擦り上げていることに、自分自身が気づくころにはかなり張り詰めていて、元希も快感を追うのに必死だった。
「あんっ・・・ああっ!」
「くっ・・・・・・っ」
隆也が自分のタオルに性欲を吐き出した直後、元希は隆也の中に吐き出していた。
「あぁ――」
元希は何か思い出したように目を細め、ニヤリと笑った。
「昨日は激しかったからなぁ」
「元希さん!」
いくらすぐ近くに人がいないといっても、練習中のグラウンドだ。
むしろ聞こえるようなところに人がいないのは、不幸中の幸いだった。
「なんだよ」
言葉をさえぎられた元希は急に不機嫌になって、隆也を見下ろすが、隆也も元希を睨み返す。
「元希さんのコントロール不足も原因だと思いますけど」
「オマエ。オレに指図すんのか
さらに釣り上がった元希の双眸が隆也を射抜く。
「指図じゃないです。ただもう少しコントロ・・・・・・」
「捕れないくせに口だけはたっしゃだよなぁ」
普段なら苛立ちや怒りに任せて怒鳴り散らしていくのに、今日は違った。
自分の仕事もこなせないような奴に言われたくはないと、隆也の言葉も負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。
「オマエが捕らねェなら意味ねーし」
「?」
捕らないとは言ってないし、捕れないとも言ってない。
今までだって言い争いになっても投球練習は続けてたし、今回もそうだと思っていたのに。
「今日は48かぁ」
元希はそんなことを言いながら、左腕をゆっくりと回しはじめた。
そしてゆっくりと隆也を見る。
「明日は捕れよ。オマエが捕れなきゃ
”オレが”を強調する元希に隆也は返事を返さなかったが、元希に気にした様子はなく、踵を返して投球練習場を出て行った。
「・・・・・・・・・」
アイツの考えてることはよく分からない。
試合に出たいと言う割りにはそんなに練習に力を入れてるわけでもないし、少し前に怪我したとか何とかでちょっとやりすぎなんじゃないかと思うくらい肩とかに気を使ってるし。
それに加えてあの性格。
投手ってのは変わってる奴が多いけど、扱いづらいったらねぇよ。一応センパイだし。
でも、監督はアイツをエースにするつもりらしい。
オレが捕れるようになったらアイツがエースだ。
エースがアイツなのは気にくわないとこもあるけど、オレがアイツの球を取れるようになったらオレはチームの正捕手だ。
エースの球は捕ってやるぜ。
人を見下して笑ってるような奴に言い負かされたままでたまるか。